令和5年9月号

消費税:インボイス直前対策 要注意!令和5年10月1日を”またぐ”取引のインボイス

1.「10月1日」を”またぐ”取引の請求書等の記載事項

課税資産の譲渡等の日付が「10月1日以後」の場合、売手(適格請求書発行事業者)は、買手の求めに応じてインボイスを交付しなければなりません。課税資産の譲渡等の日付が「9月30日以前」であれば、請求書等の発行日が「10月1日以後」であっても、これまでの請求書(区分記載請求書)で問題ありません。

「10月1日」を”またぐ”取引に係る請求書等については、売手は1つの請求書の中で、①「9月30日以前」の課税資産の譲渡等に係るものと、②「10月1日以後」の課税資産の譲渡等に係るものとに区分して記載するなどの対応が必要です。

その上で、売手がインボイス制度開始と同時(10月1日)にインボイスを交付できる場合は、上記①②を区分せず、まとめて記載することも認められます。

2.売上税額を「積上げ計算」する場合は区分された請求書等が必要

ただし、売上税額の計算について、売手が上記①②の区分がされていない請求書等を交付する場合、記載された税額をそのまま使う「積上げ計算」は適用できず、「割戻し計算」を行うことになります。「積上げ計算」を行いたいときは区分された請求書等が必要です。これは買手が仕入税額を計算する際も同様です。

【参考】国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書保存方式に関するQ&A」(令和5年4月改訂)

(※上記内容は問75に記載)

経営:黒字経営への道しるべ(第3回)限界利益をしっかり確保しよう

1.内部管理からの取り組みで限界利益をアップさせる

前回(連載第2回)の売上高と同様に、限界利益についても、内部管理から改善の道を探ることができます。

〇値引きのルールづくり

売上確保のために行いがちな値引きですが、値引きした分だけ限界利益を損なうことになるため、利益確保の観点からは慎重な判断が必要になります。安易な値引きはしないことが鉄則ですが、どうしても値引きが必要な場合もあるでしょう。その場合には、「誰がいくら値引きを行うことができるのか」のルールを整備するとともに、経営者や管理職の知らないところで値引きが行われていないか、その把握がきちんとできる仕組みを整えることも必要になります。

〇在庫管理の徹底

在庫が適正に管理されていないと、例えば消費期限や使用期限等の都合で廃棄せざるを得なくなってしまった、本当は対応できた受注を断ってしまった…など、様々なロスが生じます。

在庫の整理整頓の徹底や仕入・製造等の数量の変更など、できるだけ「もったいない」状態や状況を生じさせないような経営を心がけることが必要になります。

特に、棚卸の不備によるロスが頻繁に発生している場合は要注意です。些細なミスの積み重ねから社内外の不正まで原因はさまざまですが、「発生するのが当たり前」という社内の雰囲気にならないよう、在庫の変化をタイムリーに、かつ正確に把握できる仕組みづくりに取り組むことが肝要です。


2.経営指標の活用

TKCは、全国25万社超の経営成績と財政状態のデータを収録した、世界でも類をみない経営指標(以下「BAST」といいます。)を保有しています。1,175種類にわたる業種で分類しており、御社と近い企業の平均的なBAST値を知ることができます。また黒字企業のBASTの平均値も確認することができるため、同業黒字企業の損益構造と比較し、目標値(改善目標)を確認・設定することが可能です。

BASTを自社の現在位置の確認、解決策の検討に役立ててみませんか。ご興味がおありでしたら当事務所にお声がけ下さい。


トピック:他人事じゃない!「物流の2024年問題」と荷主にできること

1.改正貨物自動車運送事業法に基づく「標準的な運賃」について

「標準的な運賃」は、平成30年に成立した改正貨物自動車運送事業法(通称:トラック法)に基づいて、令和2年4月24日に国土交通省から告示されました。

トラックドライバーの労働条件の改善等を図るため、①トラック事業の能率的な経営の下における適正な原価に、②適正な利潤を加えたものを基準として設定されています。また、原価の算定にあたっては、①トラックドライバーの賃金を全産業の標準的水準に是正すること、②コンプライアンスを確保できることを前提とする、としています。

料金は全国の運輸局でそれぞれ、トラックの大きさごとに、距離または時間に応じて設定されています。また、冷蔵・冷凍での輸送が必要となる場合や、休日・深夜・早朝にも輸送をする場合、待機時間が発生する場合などには、それに応じた割増料金を支払うよう、その基準も定められています。

※詳細はこちらをご参照下さい。


2.トラック運送業者に対する荷主の配慮義務

トラック法には、トラックドライバーだけでなく、荷主に関連する事項についても定められています。具体的には、「荷主は、貨物自動車運送事業者がこの法律又はこの法律に基づく命令を遵守して事業を遂行することができるよう、必要な配慮をしなければならない」(第63条の2)という「荷主の配慮義務」が規定されています。これは責務規定(誰がどんな役割を果たすべきかを規定するもの)であり、トラックドライバーの働き方改革に向けて、荷主の理解と協力が必要であることを明確にしたものです。

また、同法の「荷主勧告制度」では過積載などの法令違反や、連続運転時間などの労働時間のルール違反等について、荷主の主体的な関与があった場合や、荷主が繰り返しの違反の原因となっている場合、荷主名を公表することとされています。


3.厚生労働省等から公表されている情報について

「物流の2024年問題」については、労働問題を所轄する厚生労働省と、トラック運用業者の団体である全日本トラック協会から、積極的な情報発信が行われています。以下参考に記載したリンク先より、それぞれアクセスが可能です(いずれも令和5年7月11日時点の情報)。

※以下参考

厚生労働省「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(改善基準告示)

全日本トラック協会「知っていますか?物流の2024年問題


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