令和6年7月号

金融:金融機関は融資審査でココを見る!

1.「返済能力」をアップするには?----カギとなるのは「収益力」

融資審査において、「資金使途」と並んで金融機関が重視するポイントの1つは「返済能力」です。金融機関によってこの返済能力を測る指標等は異なるものの、約定通りに借入金をきちんと返済していくためには、「収益力」のアップが不可決です。

中小企業の収益力の改善・回復・向上を目的として、中小企業庁が2022年12月に公表した「収益力改善支援に関する実務指針」があります。

同指針は、金融機関の「目線」を知ることができるものであるとともに、「経営者のための経営状況自己チェックリスト」や「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」等、中小企業経営者と会計士・税理士等の認定支援機関が対話しながら収益力改善のための取り組みを促すような資料も掲載されています。

同指針を活用し、現状の確認と今後の課題、収益力向上に向けた具体策を、我々会計事務所と一緒に検討してみませんか。


2.TKCモニタリング情報サービス(MIS)で定期的な情報開示を

金融機関は定期的に融資先の業績確認を行い、「返済能力は維持されているか」「収益力が低下し借入負担が大きくなっていないか」という点をモニタリングします。そのため、MISを通じて、年1回の決算書だけでなく、試算表も定期的に提出すると良いでしょう。最新の経営状況を把握することができるため、金融機関の安心感も高まり、信頼関係の構築にもつながります。MISで金融機関へ提供できる帳表は次のとおりです。特に、試算表を定期的に提出できる仕組みが整っているのは当会計事務所の大きな強みです。これらの帳表を金融機関へ開示して、「情報の非対称性」の解消に努めませんか。




税務:その支出、本当に「修繕費」でいいの?

■原則として、修繕費になるケース

固定資産の通常の維持管理や現状回復のために行う次のような修理・改良にかかる支出は、原則として修繕費になります。

〇業務用ソフトウェアの機能上の障害の除去、現状の効用の維持等のために行うプログラムの修正費用(新機能の追加、機能の向上等のために行うプログラムの修正費用は資本的支出)

例:新紙幣の発行に伴う自動発券機等のシステム改修費用

現在ある自動発券機、セルフレジ等について、既存紙幣だけでなく令和6年7月3日から発行される新紙幣も利用可能にするために、現状備わっている機能を維持するシステム改修であれば、その改修費用は修繕費に該当します。この場合、システム改修を行った作業内容が確認できる書類等を保存しておく必要があります。

ただし、新紙幣対応に向けたシステム改修に伴い、利便性向上のため新たな機能を追加した場合には、その新規機能の追加部分の改修費用は資本的支出に該当します(法基通7-8-6の2 ソフトウェアに係る資本的支出と修繕費)。

※新紙幣発行に伴い、自動発券機、セルフレジ等の機器の導入や改修を行う場合に、「IT導入補助金」が使える場合はあります。


〇機械装置の移設費用(解体費を含む)

〇建物の移えいや解体移築(旧資材の70%以上を再使用し、従前の建物と同一の規模・構造を再建築する場合に限る)のための費用

〇使用中の土地の水はけを良くするために行う砂利・砕石等の敷設に要した費用、砂利道・砂利路面に砂利・砕石等を補充するために要した費用

〇建物、機械装置等が地盤沈下により海水等の侵害をうけることとなったために行う床上げ、地上げ、移設の費用(ただし、従来の床面に構造・材質等を明らかに向上させるような改良工事にかかる費用は除く)


【参考】国税庁 法令解釈通達「第7章 減価償却資産の償却等:第8節 資本的支出と修繕費」



労務:押さえておきたい「残業手当」の基礎知識

1.労働時間の考え方

そもそも、「労働時間」とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間を言います。使用者の明示や黙示の指示により労働者が業務に従事する時間がすべて労働時間となります。つまり労働時間は、労働契約や就業規則等の定めに左右されず、客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務づけられたものといえるか否か等によって判断されます。

例えば、次のような時間は、労働時間となります。

①使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務づけられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間

②使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)

⓷参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間


2.休憩時間の考え方

使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければなりません。

始業9時から終業18時までの会社の場合、12時から1時間の昼休みを与えることが多いと考えられます。昼休みに電話や来客対応のために従業員に昼当番お願いする場合は、その当番の時間は労働時間となります。この場合は、昼当番を行った従業員に別途休憩を与える必要があります。


2.労働基準監督署(労基署)の調査において「賃金の未払い」と判断された事例

使用者には、従業員の労働時間を適正に把握する責務があります。労働時間を正しく認識・把握していなかったために、労基署の調査において、「賃金の未払い」として是正勧告を受けた例を紹介します。


【事例①】診察5分前から勤務時間とされた

Aクリニックでは、午後の労働時間を15時から19時の診療時間に合わせていましたが、労基署の立ち入り検査で、診療5分前の14時55分から受付の準備をする旨の張り紙が確認されました。労基署は、15時までの5分間についても、勤務時間であるとして未払分の賃金支払いを勧告をしました。


【事例②】パソコンのログ記録から出勤簿の相違を指摘された

B社では、「出勤簿」と、社員が事前に申請する「残業届」によって労働時間を把握していました。労基署は、パソコンのログ記録や電子メールの送信履歴から、時間外労働が正しく把握されておらず、「残業代が適切に支払われていない」と指摘。労働時間を適正に把握すること、および過去の労働時間に関する実態調査に基づき不足分の賃金支払いを勧告しました。


【事例⓷】配達に係る時間に加え、営業所内での作業時間も労働時間とされた

宅配事業者C社は、営業所におけるドライバーの労働時間を、タイムカードと配達時間を管理する業務用携帯端末によって把握していました。携帯端末の稼働時間のみで労働時間を計算し、営業所内での業務の大部分を労働時間にカウントしていなかったC社に対して、労基署は、営業所内での作業時間の適切な把握と、未払分の賃金支払いを勧告しました。


【参考】厚生労働省「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)」等


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岸野有紀公認会計士・税理士
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