1.個人事業者における取り扱い
法人において「雑収入」とは、営業外収益のうち、受取利息、受取配当金、投資用の不動産賃貸料、為替差益等に当てはまらないものや、金額が少額である収益等が該当します。
個人事業者は、事業活動に伴う収入や経費をもとに「事業所得」を計算します。個人事業者が本業以外の収入を得た場合、それが本業に付随するものであれば、事業所得の「雑収入」として計上します。本業とは関係がない収入は「雑所得」として、事業所得と区分して確定申告する必要があります。個人事業者の雑所得には、次のようなものがあります。
〇事業主が知人等に貸した貸付金の利子による収入
〇著述家や作家以外の人が受ける原稿料
〇FX(外国為替証拠金取引)や暗号資産(仮想通貨)での収入
2.外貨建資産等の決算期末の換算方法(法人税法施行令122条の4、122条の5、122条の7)
売掛金、買掛金、外貨預金等の短期外貨建資産等については、一年基準により短期外貨建資産等とされ、決算時の為替相場により換算する方法(期末時換算法)が法定されています。この場合、会社が短期外貨建資産等を取得した事業年度の確定申告期限までに、取得時の為替相場により換算する方法(発生時換算法)を税務署長へ届け出た場合は、発生時換算法によることが認められます。
なお、上記以外の長期外貨建資産等は、発生時換算法が法定されていますが、長期外貨建資産等を取得した事業年度の確定申告期限までに「期末時換算法」を換算方法として税務署長へ届け出た場合は、その方法が認められます。
3.雇用調整助成金の受給(法人税基本通達2-1-42)
国等からの助成金等の収益計上は、「支給決定があった日の事業年度」が原則ですが、例えば雇用調整助成金のように、事前に「休業等計画届」を提出し、計画届に基づいて雇用調整を実施し、その事実に基づいて支給申請し、その後、支給決定が行われるケースがあります。この場合は、支給決定がなくても経費と助成金等の収益を対応させるため、経費の発生事業年度に見積額を収益計上する必要があります。
4.事業者が物品購入時にポイントを使用した場合
物品購入時に会社名義のポイントカード等を使用した場合の処理については、消費税の仕入税額控除の考え方が参考になります。国税庁の「タックスアンサー No.6480」には、次のように記載されています。
以上を踏まえると、レシートに記載されている「合計額」が、「ポイント値引き」として「ポイント利用後」の金額で記載されている場合は、ポイント部分は「値引き」に該当すると考えられます(上記①のケース)。
レシートに記載されている「合計額」が「ポイント利用前」の金額で記載され、「〇〇ポイント利用」等として、支払代金の全部または一部に充当されている場合、そのポイント利用分は「値引き」ではなく、「雑収入」として処理します(上記②のケース)。
1.M&Aを円滑に進めるための取り組み
会社の将来としては、①次世代への事業継承②M&Aによる事業譲渡③廃業ーー等が考えられます。とりわけ、近年②M&Aによる事業譲渡は増加傾向にありますが、財務の状況によっては買取希望会社が現れないか、譲渡金額が引き下げられてしまう恐れがあります。財務、すなわち貸借対照表の「磨き上げ」は、円滑なM&Aのためにも重要です。また、時間を要する取り組みも多いため、今のうちから次のようなことに意識して取り組むと良いでしょう。
〇資産の所有やお金のやりとりに関して、法人と経営者を明確に区分・分離する(事業と関連のない資産や負債、法人と個人の関係が曖昧な契約の不動産等を整理しておく)
〇老朽化した設備の更新等、適切な投資を実行する(収益力向上のための投資や設備更新等に資金を回す)
〇経営者自身が月次で自社の業績数値を把握する
2.「優良企業」の条件を確認
貸借対照表の総資本に対する自己資本の割合を示す指標「自己資本比率」は一般的に30%を超えると、財務の安全性が高まるといわれています。
いわゆる優良企業とは「自己資本比率30%以上」という指標も含め、下記のような条件を満たすものと考えています。
(1)法人税申告時に税理士法第33条の2第1項に規定する書面が添付されている。
(2)中小会計要領(中小指針)または企業会計基準に準拠している。
(3)限界利益額が2期連続で増加している。
(4)自己資本比率が30%以上である。
(5)税引き前当期純利益がプラスである。
(6)自社で会計帳簿を記帳している。
(1)(2)は、会計事務所が関与し、規律あるルールの下、コンプライアンス意識の高い経営を行っている会社であることを意味します。
(3)は、2期連続で限界利益額を増やすことができるということは、その経営者が非常に優れているということの証左といえます。
(4)(5)は、前期が赤字であっても当期は黒字を目指す、そのために限界利益を継続的に増やす、その結果内部留保が拡大し自己資本が高まる、よって財務体質の強い会社となる、ということが言えると思います。
(6)は、(1)から(5)までの大前提となる条件です。厳しい経営環境が続く中で黒字経営を目指すには、経営者自身が戦略的かつ迅速な意思決定を行える環境を整えること、つまり自計化を行い変動損益計算書等から会計数値を徹底的に活用することが重要である、ということを意味しています。
1.社会保険の加入義務について
厚生年金保険の適用事業所となるのは、株式会社等の法人の事業所(事業主のみの場合を含む)です。また、従業員が常時5人以上いる個人の事業所についても、サービス業の一部、農林業、水産業等を除いて厚生年金保険の適用事業所となります(強制適用事業所)。強制適用事業所は、被保険者となるべき従業員を使用している場合は、必ず加入手続きをしなければなりません。
2.「年収の壁・支援強化パッケージ」
パート、アルバイト等で働く人の中には、年収が106万円や130万円以上になった場合の社会保険料負担の発生や、配偶者の勤務先企業において収入要件のある配偶者手当が受け取れなくなることによる手取り収入の減少を理由に、就業調整をしている人も多くいます。
人出不足への対応が急務となる中で、「年収の壁」を意識せずに働くことができる環境づくりを支援するため、政府では「年収の壁・支援強化パッケージ」として、次の施策を行っています。
(1)「106万円の壁」への対応
「キャリアアップ助成金」(社会保険適用処遇改善コース)が設けられています。手当等支給メニューにおいて、給与・賞与とは別に「社会保険適用促進手当」等を支給した場合は、新たに発生した本人負担分の保険料相当額を上限として、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定対象としない措置が設けられています(最大2年間の措置)。
(2)「130万円の壁」への対応
パート・アルバイト等で働く人が、繁忙期に残業したことで、一時的に年収が130万円以上になった場合に、事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けることが可能です。
【参考】厚生労働省Webサイト「年収の壁・支援強化パッケージ」
事務所名 | 岸野有紀 公認会計士・税理士事務所 |
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