令和4年5月号

会計:再認識、適時・正確な記帳の重要性

1.適時・正確な記帳とは?

適時に正確な会計帳簿を作成することは、会社法432条1項により求められていることです。「適時に」記録されていないと取引が脱漏(記録されるべき取引が記録されない)、あるいは人為的改ざんにより不正の起こる可能性が高まることから、これを排除するために求められています。「正確に」というのはイメージしやすいと思いますが、間違った日付や金額で記録された帳簿は会社の本当の姿を現さなくなるので必要ということです。どちらもあまりにも当たり前のことかと思いますが、これができていない場合加算税のペナルティーがあります。

2.帳簿の提出がない場合等の加算税のペナルティー

令和4年税制改正では帳簿の提出がなかったり売上のごまかしがあったりした際の加算税について改正されました。

事由加算されるペナルティー
・税務署職員に帳簿の提示・提出をしなかった場合
・提示・提出した帳簿に、売上金額または収入金額の1/2以上が記録されていない場合
10%
・提示・提出した帳簿に、売上金額または収入金額の1/3以上が記録されていない場合5%

経営:将来を見据えた種まきを

最近では税理士もインターネットを活用したクラウド会計や、資料の授受もクラウド上で共有することが当たり前になってきています。他の事業も同様でインターネットが普及した環境では、地域密着である必要性が薄れてきているのではないでしょうか。地域密着をセールスポイントにした事業モデルは変換を迫られてきていますし、また中小企業は大企業が手を出さないニッチな事業を狙うことが重要となりこれからのニッチ事業は「特定ニーズに対応する狭域ビジネス」と捉える必要があります。

そのためには、独自化や差別化が必要となりますが、自社の事業について、「対象顧客」「提供する価値」「取り扱う商品やサービス」「流通チャネル」「販売方法」など、現状のままでよいのか再考してみてはどうでしょうか。更に商品や提供方法を細分化して落とし込んでいった場合に、取り除ける要素や大幅に削減する要素はないか、新たに付け加えたり大幅に増やす要素はないか、など行動に移せるところまで考えてみると、次に何を考える必要があるか、何をしたらいいのか、少しずつイメージが湧いてくるのではないでしょうか。

「自社の事業は、誰に、何を、どのように提供する事業なのか?」

「現在の環境のまま推移したら、自社の事業はどうなるのか?」

「状況的にまずいのであれば、今後、どのような事業を行うのがよいのか?」

このような事業の状況を身近にいる税理士と一緒に会話してみて下さい。経営者の頭の整理をお手伝いできる存在だと思います。


労務:社会保険の適用拡大と年金制度の見直し

1.パートタイマーへの社会保険の適用拡大

適用対象となる従業員数のカウント方法は「現在の厚生年金保険の適用対象者」になります。具体的には以下の計算式によります。

【計算式】

フルタイムの従業員数+週労働時間及び月労働日数がフルタイムの3/4以上の従業員数


2.65歳未満の在職老齢年金制度の見直し

65歳未満の人の在職老齢年金制度について、従前は総報酬月額相当額(※1)と老齢厚生年金の基本月額(※2)の合計額が28万円を超えると年金額の全部又は一部が支給停止とされていました。

令和4年4月以降は65歳以上の人と同様に、総報酬月額相当額と老齢厚生年金の基本月額の合計が「47万円」を超える場合に年金額の全部又は一部が支給停止とされます。

(※1)(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12

(※2)加給年金額を除いた特別支給の老齢厚生年金の月額

総報酬月額相当額と基本月額の合計額支給停止額
47万円以下0円(全額支給)
47万円超(総報酬月額相当額+基本月額-47万円)×1/2×12

3.在職定時改定

従前は、老齢厚生年金の受給権者が厚生年金保険の被保険者となった場合、65歳以降の被保険者期間は資格喪失時(退職時・70歳到達時)にのみ年金額が改定されました。

令和4年4月から、在職中であっても年金額を毎年10月分から改定する「在職定時改定」が導入され、65歳以降も働き続けたことの効果が、退職を待たずに早期に年金額に反映されることになりました。

【在職定時改定のしくみ】

基準日(毎年9月1日)において被保険者である老齢厚生年金の受給者の年金額について、前年9月から当年8月までの被保険者期間を算入し、基準日の属する月の翌月(毎年10月)分の年金から改定されます。

令和4年10月分については、65歳到達月から令和4年8月までの厚生年金に加入していた期間も含めて、年金額が改定されることとなります。

※対象者は65歳以上70歳未満の老齢厚生年金の受給者です。65歳未満の人は、繰り上げ受給をされている人であっても対象になりません。

4.年金の繰り下げ受給の上限年齢の引き下げ

定年の延長など高齢者の就労機会の拡大等を踏まえ、年金受給権者が自身の働き方に合わせて年金受給の開始時期を選択できるように、66歳から70歳までとなっていた老齢年金の繰り下げの年齢が、令和4年4月から75歳までに引き下げられました。これにより、老齢年金の受給開始時期が、自身の希望により60歳から75歳の間で選択することができるようになります。老齢年金を66歳以後に繰り下げ支給する場合、年金額は65歳から繰り下げた月数によって増額(1月あたり0.7%増額)します。

●その他(令和4(2022)年5月の税務)

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岸野有紀公認会計士・税理士
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