令和5年1月号

経営:経営理念は「見えない資源」~稲盛和夫に学ぶ

1.会計を重視した稲盛和夫氏

稲盛和夫氏が経営者として優れていたのは「経営理念」を掲げ、実践し続けたこと、会計を「経営の中枢」をなすもとして経営の中に取り入れたことです。

稲盛氏は、経営にあたり「原理原則」を大切にして「人間として何が正しいかで判断する」ことを心がけていましたが、それは会計においても同様で、次のような原則を重視していました。

(1)売上を最大に、経費を最小に

利益を最大にするためには、売上が増えるのと同じように経費が増えてはいけません。厳しいコスト意識によって経費を抑えるのが稲盛流です。

(2)値決めは経営である

値段が安ければ誰にでも売れますが、それは経営とは言えません。お客さんが喜んで買ってくれる最高の値段を見抜いて、それで売るのが稲盛流です。ここは耳が痛い…

(3)キャッシュベースで経営する

今では当たり前になっているキャッシュベース経営ですが、稲盛氏は早くから「お金の動き」に焦点を当てることで京セラを高収益企業に育て上げました。

2.「アメーバ経営」について

会計の原理原則を会社の隅々にまで浸透させるために稲盛氏が取りいれたのが「アメーバ経営」です。

組織を事業展開に合わせて小さく分割し、各組織が1つの経営主体のように活動する仕組みですが、その支えとなったのが「経営理念」であり、そこで鍛えられ育った人たちが京セラの財産とも言える人材だったのです。「経営理念」と「アメーバ経営」こそが、京セラを世界企業とし、auを育て、JALを再生させたとも言えるのです。


税務:今年はこれだ!インボイスと電子取引への対応を進めよう!

1.インボイス制度への対応

インボイス制度への対応は、自社が発行する請求書等のインボイス対応と取引先が発行するインボイスの受け取りへの対応を9月までに完了させる必要があります。

書類の洗い出しは、以下のように自社の商流と受け渡している書類を図にして整理するとよいでしょう、さまざまなケースが考えられるため、営業担当、仕入購買担当、役員からも聞き取りを行う必要があります。


2.改正電子帳簿保存法への対応

電子帳簿保存法は、原則紙での保存が義務付けられている帳簿書類について、電子データで保存するための要件や、電子データでやり取りした取引情報の保存義務などを定めた法律です。

電子データによる保存は以下の3つに区分されています。

①電子帳簿・電子書類の保存(電子的に作成した帳簿や書類をデータのまま保存)

②スキャナ保存(紙で受領、発行した書類を画像データで保存)

③電子取引(電子的に送受信した取引情報をデータで保存)


上記①②についての対応は任意ですが、③は全事業者に強制適用されます。

経理の業務フローが紙ベースになっている企業では、現在の業務フローに電子取引データの電子保存が加わることで、煩わしく感じることもあるでしょう。しかし、電子取引データの電子保存については、宥恕措置が終了する令和5年12月末までにすべての事業者が対応しなければなりません。

電子取引データの電子保存は、インボイスの保存とともに、如何に手間をかけずに効率的に保存するかが重要です。FXシリーズの証憑保存機能を使えば、証憑と仕訳を紐づけて保存できるため、一つの画面で並べて確認できる、証憑を探す手間がなくなるなど、業務の効率化が図られます。証憑書綴りなどの書類の保管場所を確保する必要もありません。

3.電子取引は、さまざまなケースが想定される

電子取引には、経理部門だけではなく、役員、従業員が関係しているものもあるため注意が必要です。なお、個人のメールやチャットを利用した電子取引は、不正や誤謬等の発生リスクが高くなるため、内部牽制を踏まえた社内規程の整備等を検討する必要があります。

①個人のメールアドレスを業務で利用している。

役員や従業員が個人のメールアドレスを会社の業務で利用している場合には、会社でのメール本文等の保存管理が難しくなります。各人から電子取引データを提出させ、適切に管理できる業務フローに見直す必要があります。

②フリー(無料)のメールサービスを利用している。

無料で利用できるメールサービスは、保存期間が担保されておらず、提供事業者の都合により削除される可能性があります。サービス規約を確認の上、会社での利用・管理方法を検討する必要があります。

③添付ファイルにパスワードがかかっている。

メールの添付ファイルにパスワードがかかっている場合には、パスワードが書かれたメールも合わせて保存するなど、パスワードが解除できるように保存する必要があります。

④取引にLINEやチャットソフトを利用している。

担当者同士が個人のLINEやチャットを利用して、電子取引データをやり取りしている場合は、ダウンロードしたメッセージ履歴(ログ)、添付ファイルなどの電子取引データを担当者から提出してもらいます。


経営:まだ間に合う!補助金等の最新情報

1.経済産業省 令和5年度に向けた概算要求

概算要求の資料は下のリンクから確認することができます。価格転嫁対策や人材育成、DXに向けた取り組みなど、様々な分野に予算の投入が予定されています。

■令和5年度経済産業政策の重点、概算要求・税制改正要望について (METI/経済産業省)■
https://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2023/index.html



2.地域限定の補助金

(1)PCB使用照明器具のLED化によるCO2削減推進事業

北海道・東京事業エリア(北海道・東北・関東・甲信越・北陸)限定ですが、PCB(ポリ塩化ビフェニル)の処理推進とLED化による二酸化炭素排出量削減のため、照明器具の交換に対する補助制度があります。

昭和52年3月以前に建築・改修された建物であれば、PCB使用照明器具の調査にかかった経費の10分の1(上限50万円)、交換にかかった経費の3分の1が補助されます。

申請期限は令和5年1月31日です。なお、PCB使用照明器具の処分自体が、令和5年3月31日を期限としていますので、古い建物で建築当時の照明を使用している場合、注意が必要です(その他のエリアでは、既に処分期間が終了しています)。


PCB使用照明器具のLED化による補助金制度■

https://www.sanpainet.or.jp/pcb_led/



(2)各自治体のサテライトオフィス開設等への補助金

自治体によっては、サテライトオフィス開設やテレワーク環境の整備、ワーケーションの誘致などを目的として、補助金等を出している場合があります。

制度の有無や対象となる業種、条件などは自治体ごとにさまざまですが、離れた地域に簡易な営業所を作る、従業員にテレワークを認める、などを検討している場合、それぞれの自治体が何らかの補助制度をつくっていないか確認してみてもよいでしょう。


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岸野有紀公認会計士・税理士
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