令和5年3月号

消費税:ここが知りたいインボイス④ 適格請求書発行事業者の登録申請の注意点

1.令和5年度税制改正による適格請求書等保存方式に係る見直し

(1)適格請求書発行事業者登録制度の見直し

免税事業者が適格請求書発行事業者の登録を申請する場合において、課税期間の初日から登録を受ける場合、当該課税期間の初日から起算して15日前の日まで(現行:当該課税期間の初日の前日から起算して1月前の日まで)に「登録申請書」を提出しなければならないこととされます。

この場合、当該課税期間の初日後に登録がされたときは、同日に登録を受けたものとみなされます。


②適格請求書発行事業者が登録を取り消す場合に、届出書の提出があった課税期間の翌課税期間の初日から登録を取り消す場合には、当該翌課税期間の初日から起算して15日前の日まで(現行:その提出があった課税期間の末日から起算して30日前の日の前日まで)に届出書を提出す必要があります。


③適格請求書発行事業者の登録等に関する経過措置の適用により、令和5年10月1日後に適格請求書発行事業者の登録を受けようとする免税事業者は、その登録申請書に、提出日から15日以後の日を登録希望日として記載する必要があります。この場合、当該登録希望日後に登録がされたときは、当該登録希望日に登録を受けたものとみなされます。

(注)上記の改正の趣旨等を踏まえ、令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けようとする事業者が、その申請期限後に提出する登録申請書に記載する困難な事情については、運用上、記載がなくとも改めて求めない措置がとられます。


(2)適格請求書発行事業者となる小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置

①適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間において、免税事業者が適格請求書発行事業者となったこと又は課税事業者選択届出書を提出したことにより事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる場合には、その課税期間における納付税額が売上税額の2割に軽減されます。

(注1)上記の措置は、課税期間の特例の適用を受ける課税期間及び令和5年10月1日前から課税事業者選択届出書の提出により引き続き事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる同日の属する課税期間については、適用されません。

(注2)課税事業者選択届出書を提出したことにより令和5年10月1日の属する課税期間から事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる適格請求書発行事業者が、当該課税期間中に課税事業者選択不適用届出書を提出したときは、当該課税期間からその課税事業者選択届出書は効力を失います。


適格請求書発行事業者が上記①の適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記します。


③上記①の適用を受けた適格請求書発行事業者が、当該適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用が認められます。


(3)一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例)

基準期間(前々年、前々事業年度)における課税売上高が1億円以下または1年前の上半期(個人は1~6月)の課税売上高が5千万円以下の事業者について、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、インボイスの保存がなくとも帳簿のみで仕入税額控除ができるようになります。

■対象期間:令和5年10月1日~令和11年9月30日


(4)少額な返還インボイスの交付義務免除

インボイス制度では、値引きを行った際に、売手と買手の税率と税額の一致を図るために値引き等の金額や消費税等を記載した返還インボイスを交付する義務があります。そのため、例えば、決済の際、買手側の都合で差し引かれた振込手数料相当額やその他の経費を、売手が「売上値引き」として処理する場合に新たな事務負担となることが懸念されていました。

事業者の事務負担を軽減する観点から、すべての事業者を対象に少額な値引き等(1万円未満)については、返還インボイスの交付が不要になります。

■対象期間:適用制限なし


2.補助金の拡充

(1)持続化補助金

免税事業者が適格請求書発行事業者に登録した場合、補助金上限額に一律50万円を加算。

(2)IT導入補助金(デジタル化基盤導入類型)

安価な会計ソフトも補助対象となるよう、補助金下限額を撤廃。


経営:この費用、固定費?変動費?~変動損益計算書の活用で儲けを見える化~

1.固定費チェックのための3つの着眼点

固定費は、事業を継続するために固定的に発生する費用です。売上と比例関係にある変動費と異なり、売上に比例しない固定費が小さくなれば、それだけ儲けが生まれることになります。だからといって、人件費や他の固定費を削減することは容易ではありません。以下の3つの着眼点を参考に、固定費の増減を確認しましょう。

【着眼点1】増減の原因を確かめる

 前年と比べて、固定費の増減を確かめましょう。固定費は「人件費」「他の固定費」「設備費」に大きく分けられます。それぞれについて、大きく増えている場合、減っている場合は、その原因を確かめましょう。

【着眼点2】限界利益の”伸び”と比べる

 固定費と限界利益の対前年の伸び率に着目しましょう。固定費の伸びを限界利益の伸びの範囲内に収めることがポイントです。

【着眼点3】部門ごとに比べる

 営業所別、地域別など、部門ごとの固定費を確認することも重要です。個々の部門において、固定費の大きな増減がある場合は検証しましょう。


2.固定費削減を検討する場合は「売上や利益への貢献度」に着目

固定費削減を検討する際は、「金額の大きさ」ではなく、「売上や利益への貢献度」に着目することが大切です。近年、各種オフィスソフトなどが、従来の買切型に加え毎月一定の金額を支払うサブスクリプション型で提供されるようになりました。

サブスクリプション型ソフトの費用を見直す上で重要なのは、契約数が従業員数と比較して適切かということです。例えば、一度契約したのち、そのソフトを利用していた社員の退職後もそのまま契約している場合などがあります。サブスクリプション型ソフトは、買切型ソフトと比べて初期費用は安く抑えれられますが、固定費として一定の費用となります。契約解除の失念は損失につながりますので、契約数が適切かどうか見直してみましょう。


労務:中小企業の60時間を超える残業の割増賃金率が引き上げられます!

1.法定時間外労働等の取扱いについての補足事項

(1)中小企業の定義

中小企業に該当するかは、下記の表のうち①または②を満たすかどうかで、企業単位で判断されます。

(2)深夜・休日労働との関連

月60時間を超える時間外労働を深夜(22:00~5:00)の時間帯に行わせる場合、時間外割増賃金(50%)に加え、深夜割増賃金(25%)を支払わなければなりません。そのため、割増賃金率は合計75%となります。

また、法定休日に行った労働の時間は「月60時間」の算定には含まれませんが、それ以外の休日に行った労働の時間は「月60時間」の算定に含まれます。


(3)代替休暇の付与について

月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者に対して、割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。


2.「勤務間インターバル」の設定について

平成31(2019)年4月1日より、勤務間インターバル制度の導入が事業主の努力義務となっています。終業時刻から次の始業時刻までの間に一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を設けることで、従業員の十分な生活時間や睡眠時間を確保しようというものです。

睡眠時間の確保には、ワーク・ライフ・バランスの向上だけでなく、従業員が持っている能力を十分に発揮できるようにする、という役割もあります。努力義務ではありますが、残業の見直しや変形労働時間制の導入を検討する機会に、合わせて導入を検討してみましょう。

その他、いわゆる「働き方改革」に関係する、労働時間等設定改善指針の内容などが、厚生労働省のパンフレットに記載されています。


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岸野有紀公認会計士・税理士
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