令和5年4月号

経営:経理業務は進化しています!~電子化・ペーパーレス化への取り組みを~

1.電子取引データの電子保存についての「宥恕措置」と「猶予措置」

電子取引データを電子で保存することについて、法律上は令和4年4月1日より「電子データのまま保存しなければならない」ことになっています(原則)。しかし、大企業であっても対応準備中の事業者が多いことなどを踏まえ、令和5年12月31日までの期限付きで、やむを得ない事情がある場合には引き続き出力書面による保存を可能とする「宥恕措置」が設けられています。

その期限を迎えることを見据え、令和5年度の税制改正大綱において、この「宥恕措置」を廃止し、新たに令和6年1月1日から「猶予措置」を講じることが公表されました。

「猶予措置」では、電子取引データの保存要件に従って保存することができなかったことについて相当の理由があることを所轄税務署長が認める場合、下記の要件を満たせば、保存要件にかかわらず電子データの保存ができることとなっています。

  1. 電子データのダウンロードの求めに応じることができる。
  2. 出力書面(整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものに限る)の提示又は提出の求めに応じることができる。
つまり、「宥恕措置」では、電子取引データの保存に代えて出力書面での保存が認められていたのに対し、「猶予措置」では、電子取引データそのものの保存が必要になりますので、ご注意下さい。


2.スキャナ保存の要件緩和について

令和5年度税制改正大綱において、国税関係書類のスキャナ保存について、令和6年1月1日から以下のように要件を緩和することが公表されました。

①スキャナで読み取った際の解像度、階調及び大きさに関する情報の保存要件を廃止する。

②記録事項の入力者等に関する情報の確認要件を廃止する。

③相互関連性要件について、国税関係書類に関連することができるようにしておくこととされる書類を、契約書・領収書等の重要書類に限定する。


消費税:ここが知りたいインボイス⑤ こんなとき仕入税額控除やインボイスの保存はどうする?

1.クレジットカード会社の請求明細書はインボイスとして利用できない

(1)カード会社からの請求明細書(現行<区分記載請求書等保存方式>の取扱い)

法人カードを利用している場合には、カード会社から一定期間ごとに請求明細書等が交付されますが、この請求明細書等は、そのカード利用者である事業者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者が作成・交付した書類ではないため、消費税法第30条第9項に規定する請求書等には該当しません。

しかし、クレジットカードを利用した時には、利用者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者が、「ご利用明細」等を発行しているのが通常です。

この「ご利用明細」等には、①その書類の作成者の氏名又は名称、②課税資産の譲渡等を行った年月日、③課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(当該課税資産の譲渡等が軽減対象資産の譲渡等に係るものである場合には、資産の内容及び軽減対象資産の譲渡等に係るものである旨)、④税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額、⑤その書類の交付を受ける者の氏名又は名称が記載されていることが一般的であり、そのような書類であれば消費税法第30条第9項に規定する請求書等に該当することになります。

【参考】国税庁HP「カード会社からの請求明細書」


(2)現行の3万円未満の取引についての特例

現行は、取引の実態を踏まえ、次の特例的な取り扱いがあります。

①税込みの支払額が3万円未満の場合には、請求書等の保存を要せず、法定事項が記載された帳簿の保存のみで良いこととされています。

②税込みの支払額が3万円以上であっても請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由がある場合には、請求書等の保存がなくても仕入税額控除ができますが、この場合には、法定事項を記載した帳簿にそのやむを得ない理由及び相手方の住所または所在地を記載しなければならないこととされています。

なお、インボイス制度開始後は、これらの規定は廃止されます。

【参考】国税庁タックスアンサーNo.6496「仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存」


2.一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例

(1)令和5年度税制改正「少額特例」の創設

インボイス制度開始後は、一部の取引を除いて3万円未満の取引についてもインボイスの保存が必要になります。しかしながら、インボイス制度への円滑な移行とその定着を図る観点から、中小事業者を含めた一定規模以下の事業者の実務に配慮し、1万円未満の少額な取引については、帳簿のみの保存とすることで事務負担の軽減が図られることになりました。

(対象期間:令和5年10月1日から令和11年9月30日までの期間)。


(2)少額特例の対象となる1万円未満の取引

少額特例の対象となる1万円未満は税込みで判定することになります。

税抜金額では、標準税率(10%)で「9,090円」、軽減税率(8%)で「9,258円」までが特例の対象となり、実務的には大変煩雑な判断を強いられることになります。


(3)少額特例の判定単位

例えば、月額200,000円(稼働日21日)で個人事業者に外注を行っているような場合、稼働日で按分すると1万円未満となりますが、少額特例の判定単位は、1回の取引の合計額が1万円未満であるかどうかにより判定するため、役務の提供である場合には、通常、約した役務の取引金額によることとなります。

この場合は、月単位での取引(200,000円の取引)と考えられ、少額特例の対象とはなりません。

【参考】「インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答」財務省(令和5年1月20日時点)


金融:4月から経営者の個人保証の仕組みが変わります!

1.経営者保証改革プログラムの策定

当プログラムは、金融庁が、経済産業省、財務省と連携して、政府系金融機関、民間金融機関における経営者(個人)保証に依存しない融資慣行の確立をさらに加速させるための取り組みとなります。金融庁は当プログラムの中で「監督指針の改正」により、各金融機関に取り組み方針の公表と実績報告を求めています。

取引金融機関の方針を確認し、自社の体制整備を行い、資金調達力を強化する機会としましょう。

※【経営者保証改革プログラム】についてはこちらからご確認下さい(令和5年2月9日現在)。


2.「経営者保証ガイドライン」の遵守

現在、経営者保証に依存しない新規融資の状況は下記図表の通りです。約3割となっている民間金融機関に対して、金融庁は「監督指針の改正」を行い、金融機関が経営者保証を求める場合には「どの部分が十分でないため保証契約が必要となるのか」「どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか」などについて経営者に説明をした上で、結果を記録することが求められます(2023年4月~)。そして、記録した件数を金融庁に報告することが求められることとなります。また、金融庁に「経営者保証専用相談窓口」を設置して、金融機関からの説明がない、などの相談を受け付けます(2023年4月~)。

注意すべきことは、経営者保証を制限することが目的ではなく、「経営者保証ガイドライン」の遵守によって、経営者保証の見直し等の交渉ができる可能性を高めることです。

「事例」には、「経営者保証ガイドライン」への取り組みによって、経営力が向上した事例が紹介されています。


(出所:中小企業庁HP)

事務所名岸野有紀 公認会計士・税理士事務所
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岸野有紀公認会計士・税理士
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